それでも貴女との日々なんだ

13/17
前へ
/17ページ
次へ
ラベンダーの季節が本格的になると地元の正規社員が配属になる。私は短い休暇となり社宅に戻った。その休暇中に実家から手紙が届いた。心当たりもなく封を開けると中にメッセージカード用の白い封書が入っていた。 白い封書の表書きは実家の住所と私の名前で、それで社宅(こっち)に送ってきたのかと裏を返し、息を呑んだ。差出人は、由利明夜。ユリアだ。 どうして。なんで。どういうこと。 彼女が逝ったとか、たちの悪い冗談だった? どうして。なんで。 本当にユリアなの? この手紙はいったい、なんなの。 あれからもう半年も過ぎてるのに。 入っていたのは万博会場の絵はがき。 『親愛なるみや。 元気かね?びっくりしたか!してやったりだ!世界を駆け回ってるだろうみや!おっと、駆け回ってないみやでもおけおけさ。 そしてどこにいようと!このハガキで演劇部は集まる!行けなかった全国大会のリベンジするぜ。8月3日夜7時にシェスタホール集合だー!異論は認めん! 高3ユリアより愛を込めまくって』 『PS.みやも万博ならよかったのに!』 追伸の脇に貼られたプリクラにはユリアとはクラスも班も違う制服姿のりっちゃんと洋子が映っていた。修学旅行の自由散策コースで行った万博会場の、これは、きっと、タイムカプセルメッセージだ。 なんで、今なの。 なんだよ、もう。 なんで、なんで、もう、やだよ、ユリア、あんた、ホント、サイテーサイアクだ。 ジョジョ立ちの二人の甲高い笑い声が聞こえてくる。斜に構え写る洋子の巻き込まれた体がわざとらしい。 「なに、やっ、やってん、だか、」 これっぽっちも変わらないユリアの笑顔だ。頭に浮かぶユリアの笑顔はそのプリクラのまんまだった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加