それでも貴女との日々なんだ

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昨日から裏軽井沢のホテルのオープンヘルプに入った。早くても来春までは異動は無い。こっちの寮に住所変更をし、社宅は冷蔵庫を空にしてブレーカーを落としてきた。いつもの私なりの儀式(切替)だ。 月曜の朝は嫌いじゃない。また始まる繰り返しを示唆する月曜の朝は昨日までをリセットしてもいいと背中を押してくれる。繰り返す日々なのに繰り返される同じ日は無いと知っていた。知らないふりをしていた。でもまだ、そうまだきっと、また知らないふりで過ごすだろう。8月3日に休日申請を出すべきか迷ったまま6月の末になった。出すなら4日と連休がいい。二十代前半の頃までなら夜中に運転して朝から働いた。今はその気力も体力も無い。オープンしたばかりで平日とはいえ繁忙の予想がつきにくく連休は躊躇われた。、、ただの言い訳だ。 あの後、3通のタイムカプセルメッセージを受けとった。予期せぬことにクラスメイトから2通届いた。嬉しさより申し訳なさが勝って戸惑う。最初の休日に招待券で訪れた私設美術館の絵はがきを彼女たちにも送った。特別展示はアメリカンポップアートだった。誰もがどこかで見たことのある絵はがきを選びタイムカプセルのお礼と、迷うだけ迷って社宅の住所と軽井沢にてタカナシと綴った。一通は宛先不明で手元に戻ってきて、ほっとした。型通りのやりとりを遂行し、その先が無いことに安堵した。私はそうなのだ。礼を尽くすことでせめて不当にされたくない、とそれだけだ。 「じゃ。」 「ん。3日はごめんね。ありがと。」 ふらりとフロントに現れ私を呼び出した洋子は、軽井沢(県内)だから顔見に来た、と告げ、併設のティサロンでモーニングを頼むわとあくびする。用件は済んだものの後ろ髪を引かれた。私の休憩までは3時間あり、彼女の勤め先の長野市(大学)まで帰ることを考えれば、待っていてとは言い難かった。
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