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「こんにちは!」
また来た!今度は誰だ。変なキャラが多すぎて、正直疲れてきた。私は作者を呪った。
「うわ!なんだこの濃い面々は!ここでなら私、名脇役になれそうな気がする!」
そう言って目を輝かせる、またもや高校生くらいの女子。
「初めまして!藤田 純子です!伝説の名脇役、藤田 純一郎の孫です!」
「ああ!あなたが!見切り発車すぎて、オチをどうして良いかわからなくなって迷走しちゃった、『名脇役の恋』の!」
「はい!くそすぎるオチで、元々少なかった貴重な本棚さんが、激減しちゃってしばらく立ち直れなかったあれです!」
「本棚が激減することは、この作者にとってはあるあるですよ」
また私達が盛り上がり出すと、藤田さんの隣に居た、いかにも主人公らしきイケメンが、おもむろに服を脱ぎ始めた。
「見て!フジコちゃ~ん!俺、今日の宴会で腹芸披露するんだ~」
「腹芸すな!そして眩しい笑顔で笑うな!……これだから主人公は」
頭を抱える藤田さん。
「……え?マジすか、被った。私も腹芸……」
すると、突然サブカル女の長谷川さんが青ざめる。
「ホントですか!?すみません!……私も」と、マロニエ~の樋口さんも恐る恐る言い始めた。
「俺も」「私も」と、次々にこだまして、腹芸率の異常さに、今度は私が頭を抱えた。
……お姉ちゃん頼むから早く来て。私にはもう対処できない。
「……あの、すみません」
遠慮がちに、またもやお客が来店。今度も高校生らしきカップル。
「初めまして。真綾です。最早、苗字すら貰えませんでした」
「俺は、逆に、名前がない」
「そうなの!?深谷くん!」
来店早々に悲壮感漂う二人。
「ああ、あなた達は、あれですね!作者がまたいっちょ前に、視点変更やってみたくなっちゃった『形勢逆転!』の!」
「はい……もちろん失敗しましたよね。そして純粋に胸キュンしたかっただけの筈なのに、途中から脱線して悪ノリしちゃいまして……もう何がしたかったのか……」
「もうよそう、真綾。俺達が幸せならそれでいいじゃないか。それにしても今日も天使だな」
「深谷くん……」
すっかり二人だけ世界に浸ってしまった彼らは、周りで腹芸大会が始まっていることにも気づかない。
……お姉ちゃん、早く……頼むから!
「ごめん!アリス!遅くなっちゃって」
やっと到着した姉の姿に安心して、思わず涙が込み上げた。
姉の隣には、未だにチョビ赤髪の彼がいる。
「……………………?」
姉は黙り込んで、腹芸大会や所々で繰り広げられているカップル達の世界を見つめていた。
そうなりますよね。もう、どうしようもないですよね。
「お姉ちゃん、助けて!なんかしんないけどこんな(気持ち悪い)状態に……」
「……みんな幸せそうでよかった!」
心底嬉しそうに目を細める姉に、私も絶句するしかない。
隣に居るミツは、両手で顔を隠して笑い堪えていた。
おしまい
気持ち悪い作者ですみません!!
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