11人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
作者まじ気持ち悪くてすみません
私の名前は、三澤アリス。お姉ちゃんから譲り受けたカフェ、リコアリスのオーナーだ。
今日は、自己満足の極みのような小説を次々に投稿しているポンコツ作者の希望で、『リコリスの花言葉』完結お祝いパーティーをここで開くこととなった。
寒いことすんなーとは思ったけど、断れないよね。
「こんにちはー!」
早速一組目の来客が。どことなく雰囲気がお姉ちゃんに似ている、優しそうな女性だ。
「初めまして、樋口 真路花と申します」
「ああ、あなたが!あのろくに本も読んでいなかったド素人(今もだけど)の作者が、必死こいて投稿した、行間がやたら広くて読みづらい『マロニエの花と、月の夜』の!」
そう私が言うと、樋口さんは苦笑いをして言った。
「そうです!あの、自己陶酔に浸った気持ち悪いポエムが散見してたあれです!」
「あの、無駄に登場人物多くしちゃって作者自身も収集つかなくなったあれですね!?」
私達が作者の悪口に盛り上がっていると、横に居たやけに黒ずくめの格好をした男性がぼそりと呟いた。
「……なんか、辛気くせえ店だな……」
「アイシさん!!」
速攻で彼を追い出そうと、塩を取り出した瞬間、また新たなお客が来店した。
「いらっしゃいませ!」
「うわー!こういうちょっとレトロな喫茶店大好き!これで昔の少年漫画とか全巻置いてあったりしたら、益々いいね!」
「ウイちゃん、声でかい。その声は俺だけに聞かせて」
うわ、また変なのが来た。そう言いそうになり、すんでで堪える。
「初めまして、長谷川 初夏です! 」
千手観音のティシャツを着たショートカットの女性が、にこやかにそう自己紹介した。
「ああ!あの!作者の趣味丸出しの、自分にしかわからないギャグで十割スベってた『ハサミ男とサブカル女』の!」
「そうですそうです!タイトルからしてナイですよね!寒すぎですよね!」
「それを言ったらウチもですよ!」
私と長谷川さんが盛り上がっていると、樋口さんも賛同する。
「あー!アイシだ!あの、独特の世界観で一世を風靡したバンド、ベリアルのアイシだ!」
黒ずくめの男性に気づいた長谷川さんが絶叫する。それを、隣にいた超絶チャラそうなイケメンが制止した。
「ウイちゃん!あんな奴に関わらない方がいいって。俺の統計学によると、黒い服ばかり着る男にロクな奴はいないから」
「なんだこら、テメェ」
「アイシさん!」
黒ずくめがチャラ男の胸ぐらを掴もうとするのを、樋口さんが慌ててとめる。
「こ、こんにちは!」
カオスな状況のまま、また新たな来客が。
「初めまして、水無月 瑛子です」
大人しそうな、だけど凛とした高校生くらいの美少女だった。
「ああ!あなた!作者が調子に乗り出して、三人称に挑戦したけど難しすぎてとっちらかっちゃった『A(C)ロマンス』の!」
「そうなんです。あの、誰が何言ってるか作者もわかんなくなっちゃったあれです!タイトルからしてナイですよね」
「「それを言ったら、(以下省略)」」
「良い感じのお店だね、瑛子ちゃん。ここでデートする俺ら、少女漫画みたいだね」
水無月さんの隣に居た長身のコワモテ男子が、頬を赤らめながら彼女に囁いた。多分彼には、彼女以外の人間は目に映っていないようだ。
最初のコメントを投稿しよう!