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「ふっ。 これこそが俺の人生における教本である少女漫画だ! いいかこの漫画には色々なお約束が描かれている。 特にここの」
熱心に語る弟を眺めながらレナは思い出していた。
ああ、そういえばこいつは少女漫画オタクだったなーーと。
ぼうっとしながら弟の少女趣味に辟易していると、それを見かねたタスクの顔色が悪くなっていった。
「おいクソ姉貴、聞いてんのか? てめえの為にやってんだろうが」
「頼んでねえっつうの......」
頬杖をつきながら悪態を吐いたが、一旦落ち着きを取り戻す。
「ーーんで?」
「ったく、姉貴はマジで......ほらここ見ろよ」
目線を下げて机に置かれた漫画に目を通してみると、気弱そうな男の子と見るからにヤンキーな女子がなにかを語っているシーンだった。
「あー、その......なにしてんのこいつら?」
「はぁ......読んでも分かんねえのか?」
もう一度目を通して、今度は文字も読んでみる。
どうやら映画の内容を男の子が興奮気味に話しているのだが、女の子の方は顔を逸らして思っても無いことを言ってしまって落ち込ませているような描写がされていた。
「ーー映画の話だよな? それがなんなんだ?」
「こいつ、マジかよ。 分かんねえのか!? これは男の方が気を利かせて話しかけてるのに、女の子の方が照れからツンとした態度をとっちまってんだよ」
「それはわかるっての。 だからなんだよ」
するとタスクは髪の毛をガシガシ掻きまくる。
相当イライラが募っていたが、姉が鈍いのは今に始まったのではないと考えに至り、深呼吸をして気を沈めていく。
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