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プロローグ
私はいつものように朝刊を広げると気になる見出しを見つけた。
いじめを苦に高校二年生の男子生徒がマンションから飛び降り死亡。
そう書かれていた。
都内に通う高校二年生の男子生徒が自宅マンションの八階から飛び降りた。物音に気がついた一階の住人が一一九番通報をし、駆け付けた救急隊に搬送されたが搬送先の病院で死亡が確認されたという。
わたしは搬送される男子生徒を思い浮かべた。八階から落とされた六〇キログラムの衝撃を受けた肉体は、きっと損傷が激しかったはずだ。たとえ足から着地したとしてもその衝撃に耐えられず、大腿骨が胴を突き破るだろう。落ちどころが悪ければべっちゃりといってしまう。
私は悔しくて新聞の端をぐちゃぐちゃに握った。こんな記事が頻繁に記載される。
わが国で年間に自殺する人の数はおよそ二万人。ここ数年下降の傾向にあるが、G7の中では最も悪い数字だ。
「助けられる命もあるのに」
自殺の記事を見るたびに私はそう思う。朝から気分がよくない。
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