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悪戯を虐めと言ってしまうと負けた気がするので、高校生になってから続いている嫌がらせを僕は全て悪戯と呼んでいる。この悪戯も、あと半年もすれば終わる。高校さえ卒業すれば、僕は解放されるんだ。
騒がしい教室に入ると途端に静まり返る。クラスメイトの視線が僕の足下に注がれる。どうやらクラスメイト全員がゴキブリの悪戯を知っているのだろう。
裸足で来たり、来賓用のスリッパを履いて来たりすることを期待していたのか、悪戯の実行犯と思しき田崎は面白く無さそうに舌打ちした。
「キモ。堂々とゴキブリシューズ履いてるし。足裏の神経腐ってんじゃねぇの?」
田崎は小声でそう言ってクラスメイトを笑わせ、僕の肩に腕を掛けてきた。
悪戯が始まった頃ならこの腕を振りほどいて叫んでいたが、今は無反応が一番被害の少ない応対だと心得ている。
無視して席につこうとした時、田崎は僕の前に回り込んで耳元に口を近づけてきた。
「お前のオヤジもゴキブリみたいな生活しているんだろ? 町に隠れて、突然カメラを構えては現れて、嫌な思いをさせているんだろ?」
それだけ言うと田崎は僕の肩をぐっと押しこむように席に座らせ、机の上にドカッと腰を下ろした。
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