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三月十二日。凌空は何かを諦めたような表情でテレビを見つめて時間を過ごすようになった。彼女と思しき少女には頻繁に会いに行っているようだが、数時間したら戻って来てリビングや自室でボーっとする日々が続いている。何度か話しかけてみたが、「心配しないで」と言うだけで会話が続かない。
その日の夕方、ずぶ濡れになって凌空は帰って来た。勝司が帰って来ない事に疑問を抱いているようだったので、勝司から来たラインの画面を見せると、狂ったように叫んで家を飛び出してしまう。
凌空は私が廻世教の信者だと本気で思っているのだろうか。私が凌空の命を犠牲にして莉緒を蘇らせようとしているなんて馬鹿なことを本気で思っているのだろうか。
苛立った私は家を飛び出し、走って凌空を探した。お腹の莉緒が走らないでと悲鳴を上げている。でも、このまま凌空を放っておいたら死んでしまうかもしれない。
凌空は公園に居た。勢いよくブランコを漕いでいる。いや、無理やり漕がされているように見える。お義母さんと同じように、私には見えないナニカが凌空には見えているのだろうか。
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