中川彩香

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 ブランコのチェーンを握って止める。凌空は怯えた表情でしばらく停止し、私を心配するような台詞を吐いた。それが無性に苛立った私は、凌空の頬を初めて叩いた。  今まで、怒る事はあっても、手を上げる事は無かった。お互いに干渉しない方が親子関係は上手くいくと思っていた。でも、どうやらそれは間違いだったらしい。凌空が悩んでいたり、苦しそうなら手を差し伸べるのが親の役目なのだ。私も勝司も、それが今まで出来なかった。だから今、夫婦の関係も親子の関係も壊れかけている。全てを莉緒のせいにして、逃げていた。 「おじいちゃんもおばあちゃんも、廻世受胎の呪いで死んだんだよ? そして次は僕が死ぬ番」  勝司がおまじないだと言っていたものは呪いだったのだろうか。ここで呪いなど無いと否定しても今の凌空には届かない。今の凌空には少しでも精神を落ち着かせる時間が必要だ。  そう思いながら凌空を見つめていると、崩れ落ちるように土の上に倒れた。額に触れてみる。高熱だ。雨を浴び続けたせいだろう。  私は凌空の身体を支え、自宅を目指す。自宅の灯かりが遠くに見えた頃には凌空も自分の足で歩けるようになっていた。
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