中川彩香

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 一歩、二歩と近づいている途中、玄関の扉が開いていることに気づく。凌空も同じタイミングで気づいたらしい。私に玄関で待っているように告げた凌空は庭からバットを持って家に入っていった。  入ってから数分、家の中からは何も音が聞こえてこない。誰も居なかったのだろうかと玄関に足を踏み入れた時、勝司の靴が転がっていることに気づく。 『寂しい思いをさせてごめん』  そのセリフが聞けると思い階段を駆け上がっていくと、変わり果てた姿の勝司が立っていた。手には仏壇のようなモノを持っている。ウォークインクローゼットの屋根裏にでも隠していたのだろうか。  目の前で何が起こっているのか理解が出来ない。勝司はまるで私が見えていないように素通りして、階段を降りていく。凌空は激昂し、自分の部屋から何かを取って勝司を追いかけて行った。  私が知っている勝司は、もうこの世に居ないのだろうか。仕事に追われる日々の中で家族のことを考えてくれる優しい勝司は、消えてしまったのだろうか。  階段で勝司と凌空の会話を聞いても、何を言っているのか分からない。その会話の途中、凌空がカッターナイフの刃を出して勢いよく首へ持っていく。
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