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止められない。凌空が死ぬ。
そう思った直後、凌空は首に触れるギリギリで刃を停止させた。凌空自身もそれに驚いているようで、『どうせお前が僕を殺すんだろう? 何で止めるんだよ……』と何も無い空間に話しかけている。
勝司はそれに驚く様子も無く、淡々とした口調で『お前は自分で死を選ぶことは出来ない』と呟いた。
呆然としている間に勝司は家から出て行き、凌空も再び追いかけていく。
家の中で一人になった私はその場に座り込み、頭を抱えた。二人の会話を思い出しながら、呪いを掛けていたのは本当に勝司なのだろうかと考える。勝司の目は正気では無かった。しかし、心の奥で何か別の意思を感じさせるような雰囲気も残っていた気もする。
それから数分、あの二人を探さなければと思い立ち上がった瞬間、勝司から電話が掛かってきた。
何を言われるのだろうと恐る恐る電話に出る。
『彩香……』
私の名前を普通に呼んでくれたことに安心した途端、瞳から涙が溢れ出した。
「あなたは一体何がしたいの? 何で凌空にあんな事を……」
『俺はただ、凌空を助けたいだけだ』
その言葉の意味が分からず、「どういう意味?」と涙声で返す。
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