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『全部、思い出したんだ。俺が廻世教の信者で、精神が不安定だった頃に廻世受胎をしてしまったことを』
勝司はそう言った後、廻世受胎について詳しく説明してきた。元々はお義父さんとお義母さんと叔父さんの命を引き換えにしたものだったが、叔父さんが亡くなった事で血縁である凌空が選ばれてしまったらしい。どちらにせよ、勝司が呪いを掛けた張本人であることは間違いないようだ。
「命を犠牲にして、亡くなった人を蘇らせるなんてあっていい訳ないじゃない! なんでそんな事を……」
私はお腹を擦りながら、乱れた呼吸を整える。
『すまない。今さら俺が何を言っても言い訳にしかならない。ただ一つ、彩香に聞きたい事がある。もし、凌空を救う方法があるのなら、お前は協力してくれるか?』
「するに決まっているでしょう。何でそんな確認をいちいち……」
『俺も死に、お腹に宿っている命も失うことになってもか?』
考えもしていなかった言葉にスマートフォンを持つ手が震える。落とさないように両手で支え、「どういう意味?」と震える声で訊ねた。
『凌空に掛かっている呪いを止める方法はただ一つ。廻世受胎を実行した俺を死の予定日に凌空が殺すことだけだ。俺が死ねば、廻世受胎も解ける。つまり……』
「お腹の子も、全て消えてしまうって……こと?」
言葉の続きを呟きながら問いかけると、勝司は重たい口調で肯定した。
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