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二十三時ちょうどに浴室へ向かう。シャワーで髪の毛を濡らしながら耳を澄ませ、凌空が玄関を開く音を静かに聞いていた。もし、勝司の計画が失敗したら凌空は死ぬ。成功しても勝司が死ぬ。どちらにせよ、大切な命が一つ失われるのだ。
瞳から流れる涙をシャワーで流していると、洗濯機の上に置いておいたスマートフォンが鳴り始める。顔と身体を乾いたタオルで拭きながらスマートフォンを手に取ると、勝司の名前が液晶に表示されていた。
応答ボタンを押すと、『凌空はもう出たか?』という勝司の声が聞こえてくる。
「うん、いま出た」
『そうか、良かった』
「本当に、コレで良かったと思う? あなたを殺してしまった凌空が罪悪感に苛まれて死を選ぶ未来は考えたりしなかったの? 後悔はないの?」
『今更後悔したところで、過去には戻れない。元々は、廻世受胎をしてしまった俺の責任だ』
「結婚した時はさ、おじいさんおばあさんになっても手を繋いで、同じタイミングで死のうなんて話たりしていたのにね」
『そんな時期も……あったな』
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