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「勝司……死ぬの、早すぎるよ。私と凌空二人、これからどうすれば……」
『ある程度貯金は残っている。親父とおふくろの遺産もあるし、しばらくはやっていけるはずだ』
「そんな現実的な話をしているんじゃない。遺される私達の心の話をしているの!」
『心ならいつも彩香のそばにある。俺も、莉緒も、ずっと彩香を見ている。まぁ、俺は親父とおふくろを殺しているから莉緒のいる天国には逝けないだろうけどな』
「そうね、あなたはきっと、地獄逝きね」
『ずいぶんハッキリ言うな』
「最後くらいハッキリ言わないとね」
『じゃあ俺も最後だからハッキリ言わせてもらう。今までありがとうな、彩香。そして、今までごめん。莉緒が亡くなった時、もっと俺が支えていれば、こんなことにはならなかった。全ては俺の心の弱さのせいだ』
「こういう時は、ありがとうだけで良い。そう言ったのはあなたでしょう?」
『ハハ、そうだったな。彩香……凌空を、よろしく頼む』
穏やかな口調でそう言った勝司は電話を切る。それに合わせて私は膝を抱え込み、大声で泣き叫んだ。
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