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『お母さん』
誰かに呼ばれた気がして目を開く。
どれだけ眠っていたのだろう。時間の感覚が無い。長い悪夢を見ていた気もする。
右手が温かい。誰かに握られているようだ。
視線を移動させると、凌空がいた。
安心した表情で寝息を立てている。
私は繋いでいた手を離し、凌空に毛布を掛けた。
家族四人で感じていた幸せは二度と感じることは出来ない。でも、凌空と二人で感じる幸せなら、これから先も作っていける。
勝司がとった選択が間違いだったと思う未来が来るかもしれない。逆に、この選択が間違いでは無かったと思える未来も来るかもしれない。
そのどちらの未来も、生き続けないと見えないモノなんだ。
私はカーテンから漏れる朝の光を見つめながら、朝食の準備を始めた。
FIN
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