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中川勝司
莉緒が死んだのは、俺のせいだ。
事故が起こった日、俺は莉緒と動物園に行く約束をしていた。取材を手伝って欲しいという後輩の頼みを断っていれば、莉緒はきっと今も生きていた。
莉緒との約束を破ることに罪の意識をもっと持っていればと、この二か月間どれだけ考え、苦しんだか分からない。
結局、俺は失うまで気づく事は出来なかった。最愛の娘を失うことが、どれだけの苦痛を伴うかということを。
莉緒が事故に遭ったという知らせは警察からだった。自分の目で血塗れの莉緒を見た彩香は、俺に電話を掛けることが出来る状態では無かった。
はじめは仕事場で眠っている間に見た悪い夢だと思った。そうであってくれと願った。しかし、淡々と状況を説明する警官の声とテレビに映っている見覚えのあるピンク色の自転車が現実であることを俺に告げる。
強いショックが起こると頭が真っ白になるというのは本当だった。
何も考えられない。何も聞こえない。何も。
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