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「それより先輩、そろそろ出てきますかね?」
「入っていく時は一時間程度ずらしていたから、二人一緒に出てくる可能性は低い。なんせ、好感度ナンバーワン俳優と清楚系で売り出している新人女優だからな。スキャンダルだけは絶対に避けたい二人だ。そう簡単にはツーショットは抑えられない」
俺はそう言って煙草を咥えてハンドルに両腕を置き、百メートル先にあるビジネスホテルをハンターのような目で見つめた。
この仕事をはじめて十五年は経過しただろうか。元々フリーのカメラマンだったが、いつの間にかSPARKという雑誌の編集までやらされ、直属の部下までいる。縛られるのが嫌いで始めた仕事だったのに、今は笑えるくらいに縛られた生活だ。締め切り前はほとんど家にも帰れない。ただ、今はその忙しさのおかげで精神が保てているような気もする。
政治家の裏金問題や新人アイドルの枕営業など、様々な現場にカメラを向けてきた。俺が撮った写真が原因で芸能界や政界の引退を余儀なくされた者もいる。そいつらからしたら俺は、害虫でしか無いのだろう。
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