トメオとジョージ

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「ったく。どこの猫だよ。勝手に入ってんじゃねーよ」  さくっと捕まえて部屋の外に放り出そう。そう思って一歩近づくと、猫はするりと後ろに逃れた。 (あなたには心底がっかりです)  心に声が聞こえ、思わず「エッ」と動きを止めた。 (手を叩いて喜ぶとか、目を潤ませて感動するとか、何か反応はないんです か)  辺りを見回すが、当然のことながら独居の部屋には自分一人しかいない。 (せっかくの私の舞を一体どうしてくれるんです。すべて台無しじゃないですか!)  恐る恐る猫に目を落とすと、そいつはこちらをじっと見つめて、恨みがましい声でニャアと鳴いた。 「もしかして……おまえなの? 今、喋ったの」  ばかばかしいという思いとのせめぎ合いはあったが、そこは職業柄、世間一般の人間よりは「怪異」に対して柔軟な人間だという自覚はあった。 (「おまえ」だなんて呼ばないでもらえますか? 不愉快だなぁ)  心に響く声に同調するように猫は低いうなり声を上げた。 (私のやんごとない能力を人間に理解させるには、踊って見せるのが最善だと思ったのですが、どうやら間違いだったようですね) 「…………」
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