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にわかには信じられないことだが、目の前にいるこの小ぢんまりとした痩せ猫が声の主だとしか思えなかった。
さすがにぞっとして、玄関ドアに背中が触れるところまで身を引いた。
「あの……、とにかく、今すぐに出てってくれない? 不気味だから」
(ブキミ、とは?)
「気味が悪いってこと。だってほら。踊る猫っていえば、化け猫的なやつじゃん」
(人間界では、我々はそのように呼ばれているらしいですね。まことにもって心外です)
ある程度の距離を取りつつもリラックスした様子の猫は、あたかも異議を唱えるように尻尾を持ち上げ、ぽそりと地面に打ち付けた。
「呼ばれてる? それはつまり、おまえはガチな化け猫ってこと?」
(その呼び名については不本意の極みではありますが、認識としては間違っていないかと)
「ほ、……ほぅ? ……ほう!」
バカじゃないの? いや、猫じゃなくて、おれが!
自らに突っ込みながら、慌てて肩から下げていたカメラを取り出した。追い出すなんてとんでもない! これはあれだ、ネタがネギ背負って自ら飛び込んできたってことだろうが!
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