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「私、ストーカーされているみたい」
約1年ぶりに電話をしてきた姉ちゃんが、開口一番にそう言った。
「…え!?姉ちゃんが!?」
「うん、そうみたい」
相変わらず他人事みたいに話すなぁ。
「はぁ…。姉ちゃんをストーカーするなんて相手の男はどうかしているよ…」
「私もそう思う。ストーカーする相手を間違えてるんじゃないかな」
姉は面白そうに笑っている。心配している様子は微塵もない。
それもそのはず。
20歳で柔道五段を取った実力の持ち主で、今でも週2でジムに通っていると聞いている。
弟とは違って姉は昔から運動してり体を鍛えたりする事が好きだった。
取っ組み合いの喧嘩になったら一瞬で負ける。
それでも、さすがにストーカーは心配だ。
「警察に相談した?」
「まだ。確証が無いし、ストーカーされる心当たりも無いんだよね。顔も見てないんだもん」
「でも、付けられてる気がするんでしょ?」
「うん」
「足音とかするの?」
「いや、それはない。付けられてる気配がするだけ。電柱の下で影が見えたこともあるけど」
影か……。
電柱の光で伸びる不気味な影を想像して思わず身震いする。
「……確かにそれだけだと警察に信じてもらえないかもね」
「あんたみたいにひょろひょろの影だったよ」
「あっそー」
「だからしばらくは様子を見るよ。私を付ける勇気のある人の正体も気になるし」
「姉ちゃんは相変わらず危機感うすいなぁ……。気をつけてよ?」
「わかった。じゃ切るね」
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