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「あのね、サークルの先輩に何がいいか聞いて、ふっちーの喜びそうなの選んだんだ。ね、開けてみて?」
バイトも頑張ったし、やっと渡せる。そんな気持ちだった。
「いらない」
ふっちーから出た言葉をなかなか理解出来なかった。……え?
「あ、中身、イヤホンなんだけど、ほらトレーニングとかウォームアップとかの時に聴けるかなって、ふっちー音楽好きだからって思ったんだけど、ごめん、他のが良かった?」
「いや、何もいらない」
ふっちーの顔を見上げたけど、何も映ってないような目をしてた。何もというか、もう私は映ってない。
「もう、無理。紗香、俺、お前無理だわ」
そう言って、立ち上がると、呆然とした私をそのままにバタンと玄関のドアが閉まった。
……無理って、言った?無理って言ったの?
ちゃんと聞いたのに、全然わからない。頭が理解してくれない。
今日、ふっちーは何度も何か言いかけた。聞きたくなくて、遮った。そうかもって、予感はした。予想してたより、キツい。
私はそこで泣き崩れた。もう頭の中も心の中もぐちゃぐちゃで、何が何だかわからなかった。夢であって欲しかった。自分がこれからどうなるかわからなかった。消えてしまいたかった。
──息が出来ない。
気を失ったのかもしれない。バンッという大きな音がした様な気がする。
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