vol.2

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────…… 紗香の部屋を飛び出して、蒸し暑い廊下で立ちすくむ。足が進まない。 紗香、絶対に泣いてる。そう思うと胸が痛かった。……違う。紗香が泣いてるのも、泣かせたのもつらいけど、別れるのがつらい。 無理だ。結局、別れる方が無理だ。 ──許そう。何でって聞いて、許すからあいつと切ってって言って、サークルも辞めろって言って、紗香が頷いたら全部許そう。 浮気されても、別れたくないと思うくらい好きだった。 それを認めたら、足が勝手に動き出していた。玄関のドアを開ける力加減も出来なかった。バンッとデカイ音が鳴る。靴も蹴り散らかした。 紗香が泣いてる。それが見てると、もう何でも良くなった。 自分の腕に押し込めて、ぎゅうぎゅう抱いた。 「紗香、お願いだから俺のこと好きだって言って。あいつより好きだって言ってくれたら全部受け止めるから」 紗香がビクリと肩を震わせた。全部、知ってる。そう言うつもりだった。紗香は顔を上げると、濡れた目で俺を確認するように見つめた。早く、言ってくれ。祈るような気持ちだった。紗香の目が揺れる。沈黙が、ずいぶんと長く感じた。紗香は、きょと、目を止めるとやっと口を開いた。 「ドイツ?」 ──とんだ茶番劇を演じてしまいました。この後のことは、恥ずかしすぎてあんまり覚えていないような、気がします。 だけど、俺は誓って、紗香のことが好きです。ごめんなさい。
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