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────……
ふっちーの言ってることが理解できなかった。悲しくて、頭が追い付かなくて、じゃない。本当に意味がわかんない。何言ってるの?
「ドイツ?」
ふっちーが、苦しそうに顔を歪めた。初めて見た、こんな顔。変な言葉が出て来ちゃったけど、ふっちーは今にも泣き出しそうな顔のまま。
「……浮気、知ってるんだ」
「え? 浮気?」
菜月ちゃんの顔が浮かんだ。浮気、してるの?
「いや、そっちの男……。浮気じゃねえのか。じゃあそっちとも付き合ってて、二股ってこと?」
「二股……って」
「違うのか? じゃあそっちが、本命ってことなのか……」
ふっちーの目がまた何も映さなくなった。わからなかった。どういう意味なのか。でも、さっき、『お願いだから俺のこと好きだって言って』って言った。お願いされなくても、いつだって言ってる。浮気、したの?
「ふっちー、浮気したの? でも、浮気なら許すよ。1回だけなら、許す。でも2回目も許しちゃうかもしれない『あいつより好きだって言ってくれたら全部受け止めるから』って言った、よね……その子より、絶対に私の方が好きだもん。ふっちーのこと、好きだもん。だから、私のとこに帰ってきて! ふ、う、ふぇー…‥」
浮気されても、好きだった。私の方に帰ってきてくるならそれでいいと思った。
──ここからは、あんまり記憶がない。恥ずかしすぎて。
落ち着いた頃
「茶番かよ」
と、ふっちーが言った。泣きすぎて頭が痛い。ついでに完璧だったメイクが台無しだ。
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