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────……
「ふっちー、女の子から下の名前で呼ばれてんね」
「あー、最初に津守が下の名前で呼び初めて、そうなった」
「へえ」
「お前も呼べば?」
「え、やだよ。他の女の子と同じ呼び方なんて」
「呼び捨ては誰もいないから」
チラリと私を窺ってそう言った。
「え、やだやだ、恥ずかしい」
「そ? 空いてんのに」
空席はひとつ!今日から私はその席におさまった。
────
「紗香、これありがとうな」
ふっちーが自分の耳元のイヤホンを指差していった。
「あ、うん。へへへー、気に入ってもらえて良かった」
「うん」と、頷いた後でちょっとだけ不服そうにして
「でも、そのためにあんなバイトとかするのは心配だから、ヤだ」
!!可愛い言い方に心臓がギュギュッとなる。
「うん、ごめんね」
「いや、俺のためだし、こっちもごめん」
最近、二人で謝り合うことが多い。変なの。
「来年は初めてのお酒で乾杯しようね」
「うん。……あ、でもそん時、お前まだ酒飲めないじゃん」
「あ! そうだぁ。初めてのお酒は二人で乾杯したかったのに……」
がっかり。何で同じ日に生まれなかったの、私!
「しゃーねえなあ。じゃあ俺がお前の誕生日まで待っててやる!」
「ほんと? ほんとに? アパートの人たちとこっそり飲んだりしないでよ?」
「うん」
来年の約束、来年も一緒。不安に思わないことに、幸せ過ぎてニヤニヤしちゃった。
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