vol.3

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──噂をすれば何とやら。 それからすぐに、街でばったり芳川に出くわした。 「よお!」 なんてお互いすぐに声を掛ける。俺は芳川と今泉に何かあったのは知ってるけど、芳川は知らないわけだ。どうするか……。 「芳川、今泉とまだ付き合ってんの?」 そう聞く。俺と芳川は高校ぶりなのだから。 「まだ……ってか、付き合ったとこだけど」 「あ、そっか、そっか。ね。んじゃあやっぱこれ、芳川か」 今泉のメッセージアプリの画像、映り込んだ男の腕は、やっぱり芳川。 「うん、そう」 「はは、そうか。やっぱ上手くいったんだな」 ……ほっとした芳川に、俺の存在を知ってたのかと思った。今泉が話したのか。何となく気まずい。 「ああ、そうだ。ちょっと困ったことがあって、アドバイス欲しいんだけど……」 話題を変えないと……。 「この前、柴田にばったり出会ってしまって……」 それだけ言うと、芳川は全てを悟ってくれた。 「なるほど」 「何とかなりませんか」 「……えーっと、“お部屋デートするくらいいい感じの子がいる”と言うのはどうでしょう。これがね、結構効くのよ」 はーん、お前はそう言ったわけね。と、一人納得する。 「俺、実家だけど」 「尚更いいね」 「言ってみます。虚しいけど……」 芳川を睨むと 「えと、公務員に憧れてる女子が職場にいるけど紹介しようか?」 「いいかもな」 と、俺も笑った。まあ、社交辞令だ。スマホ出したついでに芳川とも連絡先を交換した。 今泉、やっぱ芳川に話してんだな。俺が公務員なことを芳川が知ってるってそういうことだ。
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