vol.3

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勘繰ったのが馬鹿らしいくらいの能天気な出で立ちで芳川は俺の隣に座った。 「いや、向かいに座れよ」 「あ、そうか」 「ふっ、バーカ。今泉元気か?」 早々に聞くと 「うん、元気」 と、顔を緩ませた。この瞬間に抱いた感情をそのまま伝えるのは、溜めておきたくなかったからだ。 「羨ましい」 「あー、うん。あー……」 「今泉が可愛いってのもあるけど、単純に彼女がいるのが羨ましい」 それが一番素直な気持ちだった。芳川は俺をじっと見る。何か居たたまれなくなる。俺は芳川みたいにお洒落でもないし……って、芳川もよく見ればシンプルな服装だった。ベージュのブルゾンを脱ぐと、上も下も黒。なのに、こいつが着ると決まるんだよな。雰囲気がある。 「柴田は……」 「あ! あのアドバイスで撤退してくれた。ありがと、助かった」 芳川が言い切る前にそう報告した。 「やっぱ、柴田はダメだったか。悪くは無いんだけど、なんだろうな」 芳川も俺と同じ事を言ってておかしい。 「圧がね。逃したくないみたいな、圧」 「はは! 確かに。でもな、柴田がロックオンするということは、やっぱ落合は結婚すんのに熱い男なんだな。女子に狙われるぞー」 「……お前もロックオンされてただろ」 俺がそう言うと、芳川は肩をすくめて見せた。
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