vol.3

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「羨ましい」 「あー、うん。あー……」 「今泉が可愛いってのもあるけど、単純に彼女がいるのが羨ましい」 と、酒のせいもあって、この会話を何度も繰り返した。結局そうだ。羨ましい。 「そんなに出会いないのか……」 「そうだな。普通の企業ではないし、友達の紹介もピンとこなかったし、合コンもダメ。無駄にうろうろして柴田に出会うっていう何とも良くない状況」 「あはは! うーん、うちもお客さんは無理だし。マジで従業員紹介しようか?」 「……そうだな。のんびりしてられないし。結婚したい」 「……ほお」 「なんだよ」 「その子も同じこと言ってたわ」 ここ、掘り下げて聞けば良かったのに、紹介してもらう子を会う前からあーだこーだ詳しく聞いて、条件が悪けりゃやっぱいいや。なんて言うのは感じ悪いだろうかと、何も聞かなかった。 会えばわかるしな。フィーリングってやつ?とにかく、期待してたわけじゃないし、軽い気持ちだった。芳川に会って楽しい時間を過ごしたこの日はなんせ気分が良かった。 ──その芳川の紹介はあっさり決まって、この週末には決行された。芳川の職場の子だったら、普通のOLとは違って雰囲気のある人なんだろうか……。と、少しだけいつもより冒険した服装を選んだ。
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