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「あ、じゃあ、二人の方が話しやすいと思うから」
そう言って、芳川は俺たち二人を残すとさっさと帰って行った。おかしいと思った。クロスバイクで待ち合わせに来た芳川に、長居する気はなかったのだと気づけば良かった。
目の前にはガッチガチに緊張した女の子。第一印象は可愛いとか優しそうだとか、フィーリングとかそんなのぶっ飛ばして 「若っ!」だった。
「あ、いえ。21です」
「……あ、そっか」
彼女は俺が引いたことに気がついたのか
「でも、今年22です」
と、おどおどとしながら言った。
いやいや、21が22になったところで何も変わらない。正直10代に見える……。ため息を吐きそうなのを我慢して、今日この時間はやり過ごすことにした。
芳川のヤロウ!いや、聞かなかった俺も悪いのか。なかなか“いいなあ”って思える相手に出会えない。本当に難しいことなのだ。
「じゃ、とりあえず食べようか」
この店は芳川がこの子と二人で決めたらしい。今泉とよく来るのか?そんな邪推をしてしまう。
「ここ、来てみたかったんです」
と、少しはガチガチが解けたのか、メニューを持ってそう言った。
「ああ。そっか、君の希望ね。何が美味しいんだろうね」
俺もメニューを手に取った。女子が好きそうなイタリアンだった。
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