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ぱしぱしとマスカラがしっかり塗られた睫毛が打ち合わされた。眉も髪も同じくらいに明るい茶色(ほぼ金髪)で、爪はモスグリーンとイエローのネイルが交互に塗られていた。
「そう、ですか」
何か正反対だって言ってしまった気がして、モナちゃんだって俺じゃない感じで、気にしなくていいのかもしれないけど、気が咎めた。
空気が悪くなったタイミングで、モナちゃんが楽しみにしていたチーズのピザが届いた。ピザ生地が皿みたいになっていて、チーズが普通の数倍盛られているもので、とろけたチーズを掬うように食べる。らしい。
「ほら、熱々で食べないと」
「わあ、美味しそう。これ、表に看板出ていてずっと食べたかったんです」
軽くなった空気にほっとした。恋愛対象には見れないけど、可愛い。本当に嬉しそうで、気持ちいいくらい……食ってる。あのこってりを。若いな。
「食べないんですか? 伸之さん」
「……食う」
食うけど。
熱々のチーズをハフハフ言いながら食べて、伸びたチーズを器用に巻き取ると
「ねえ、私には聞いてくれないんですか?」
「何を」
チーズが熱すぎて、冷たいビールで流し込んだ。
「どんな人がタイプなの? って」
うかつにも、顔に出てしまったかもしれない。“あ”って。モナちゃんはちょっと寂しそうに笑った。ダメだな、こんな若い子に気を使わせるなんて……。
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