vol.3

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ぼーっとモナちゃんを見送った。咄嗟のことで『どっちも空いてる』と正直に答えてしまった。連絡先も交換してしまった。 ちっ、 ちっちゃ。 店では気づかなかった。向かい合って立つとわざとらしくない上目遣いに、小柄なのがわかった。 マジか。気に入られる要素なんてあったか?いやいや、と首を振った。どうしたものか。モナちゃんのタイプは『伸之さんと同じです』って、言ってた。俺と同じ『わりと、落ち着いた感じの子』モナちゃんみたいな子から見ると、普通に働いてる男はだいたい落ち着いた感じに見えると思うんだけど……。 最近は柴田といい何かちょっと(かなり)違うみたいな子にモテるな。複雑だ。でもモナちゃんには柴田と違い、嫌な圧はない。その代わり、受け入れられないことに、申し訳ないという気持ちが強い。これはこれでしんどい。 せめて、モナちゃんがもう少し大人ならなあ。まあたった1回会っただけだ。何とかなるだろう。その前に、この場を設けてくれた芳川に一言詫びを入れるつもりだった。 せっかく、紹介してくれたのだし、芳川とモナちゃんが気まずくなっても困るからだ。 家に着く頃、モナちゃんから 『モナです、今日はご馳走さまでした。土曜日、楽しみにしていますね』 と、メッセージが入った。あー……飯、どこに行くかな。 多少、気は重たかったが、誰かのために店を探すのは久しぶりのことだった。
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