vol.3

22/44
前へ
/192ページ
次へ
モツァレラチーズの串揚げを火傷しないように歯だけでかじって口の中ではふはふと冷ましている。 食う頃になると緊張は解けてくるんだな。と、ふっと吹いてしまった。 「ん?」 と、首を傾げる姿はやっぱり若いというか幼い。 「いや、旨そうに食うね。チーズが好きなんだ?」 「……はい。食べます?」 なんて、かじった所を反対向けて差し出してくる。 「……いや、大丈夫」 「……」 俺からふいっと目を逸らし、続きを食べ始めた。だけど、明らかにさっきより旨そうではなく、テンションが下がったのが目に見えた。緊張とは、違うもの。 また、帰りたそうだとか思われていたらまずいと、何か会話の糸口を探した。そうだ、モナちゃんが2時間以上かけた…… 「今日は、この前と雰囲気が違うね」 そう言うと、大きな目をくりっとこちらへ向けた。 「はい。気づいて貰えて嬉しいです。どうですか?」 「……どう。いやそんなに変わらないけど。どっちもモナちゃんって感じ」 顔立ちとか、若さもあって化粧しなくても可愛い気がする。って意味で言ったつもりだった。 「あ、そう、ですよね……」 更にテンションを下げさせてしまって、いや、今日の方がって言うべきだったとは思ったが、盗み聞きしてしまったことを自分で気づいたかのように言うのは憚られた。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1118人が本棚に入れています
本棚に追加