vol.3

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ふっ、と笑ってしまった。その顔が可愛くて。それに、俺の為に頑張ってくれたのも健気で可愛い。 さっきは届かなかった手で、そっとモナちゃんの頭に触れた。 「可愛いよ。どっちも。って言ってる」 「……子ども扱いして」 モナちゃんは拗ねた目を向けたけど、頬がほんのり赤かった。 手を離すと 「ごめんなさい」 と、溢す。 「何が?」 「好きじゃない人に好かれて」 あ、『俺もそんな感じ』って、そう取ったのか。ただの共感だったのに(あと、柴田の件)。つか、モナちゃんは、もう俺のこと『いいなあ』じゃなくて『好き』なのか? 「俺、好かれてんの? モナちゃんに」 そう言うと、耳まで赤くなってしまった。 え、マジか。胸が、くすぐったい。真っ赤な顔で何も言わず、チラリこちらを伺う。くりんとした目が子犬みたいで可愛い。可愛い。 モナちゃんの動揺がうつったのか、こっちも顔が熱くなるのを感じた。何か言わなきゃならないんだけど、鼓動が激しくなってくるのと、『付き合ったことがない』っていうカミングアウトが頭の中をぐるぐるとしていた。 付き合ったことがないということは、経験もないのか?しょ、処女?いや、何考えてんだ、俺。これは、ど、どうだ?キスも?じゃあもっと、同い年くらいの奴と付き合った方がよくないか?や、だって、俺と付き合って結婚するとなると俺しか知らないわけだし、っていいか。今は結婚とかそこまで考えなくてもいいじゃないか。 って、……そこまで?
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