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「もう少し、時間を下さい。あの、これから、良かったら私の家に来ませんか?」
家に行くということは、終電には間に合わない。……つまり、そういうことだ。返事に戸惑っていると、居心地悪そうに小さくなっていく姿に、どうしようもない気持ちになった。
モナちゃんと付き合うって決めてからは、年の差とか、系統とか、結婚とか一旦置いておいて、ただ浮かれていた。誰かの事を考えるのは楽しいもんだなって……。
「ごめん」
俺が謝ると、モナちゃんがビクリと肩を震わせた。
「あ、そうですよね。明日、お仕事……」
「じゃなくて、」
モナちゃんの様子から、かなり勇気を出して誘ってくれたのだということはわかっていた。先に言わなきゃならなかった。
「モナちゃん、俺はお試しで付き合ってるんじゃないよ。ごめん、先に言えば良かったね。俺、モナちゃんのことちゃんと好きだよ」
モナちゃんの震える指先をぎゅっと握った。モナちゃんは、え、とか、ん、とか何やら言ってだけど、
「だから、もう少し、連絡ちょうだい」
って俺が言った時は
「は?」と、はっきりと声に出した。モナちゃんは頑張るとか言いながらメッセージも電話も自分からしてくることはなくて、それを不服に思っていたんだと、言ってしまってから気がついた。
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