vol.3

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後日、俺から提案した。 「旅行でも行こうか」 親睦を深める目的だった。だけど、後から考えたらいかにも……だった。(そう、思われてそう) でも、まあ、それもそうだよな。キスもしてない。旅行、しかも泊まりあればシチュエーションを整えたみたいだ。その日が特別な日になる。のは、わかってるよな? 考え過ぎもよくない。そう思って純粋に楽しめるように計画を立てた。ちゃんと二人で意見を出し合って、モナちゃんが好きそうなテーマパークとか、観光地とか何ヵ所か候補地を上げる。モナちゃんは絶対にテーマパークだろうと思っていたのに古い街並みが観光地の静かな場所を選んだ。 「ここ?」 「はい」 「意外。テーマパークとか行きたいって言うかと思った」 モナちゃんはもじもじすると、 「次、次があれば、行きたいです。一緒に」 「え、もちろん。行くけど、何で今回は……」 「初めてなので」 初めて!? 「初めての旅行なので」 「あ、旅行ね」 「……ん? はい。ですよね」 「です」 落ち着け、俺。(の、下心) 「ゆっくり、したいなって」 「ゆっくり……したいね」 じっ、と見つめられては、また『ゆっくり』を深読みしてしまって、そっと目を逸らした。 「あの……」 「何?」 視線を戻すと、またじっと見られ、色んな衝動を抑えに抑えてなるべく平坦な声を出した。
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