vol.3

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──旅行当日。 モナちゃんは気合い、入ってんなーって格好とメイクだったけど、つまりは 「いつもより、可愛いね」 ってこと。俺がそう言うと、赤くなった。モナちゃんの希望でなるべく旅先での時間を取れるように近場へと車で出かけた。 綺麗で古い街並みを見るのに車を停めて歩く。初めて繋ぐ手が恥ずかしいけど、幸せで、今日ここへ来るまでもずっとモナちゃんの事を考えていて、“ナシ”って思ってたことろからこんなにも逆方向に気持ちって振れるものなんだなと自分で驚いている。 あのまま、ナシにしなくて良かったと思う。ぶらぶら誰も知りあいがいない街を歩くのは開放的にもなって、一気に距離が恋人っぽく近づいた気がする。途中、工芸品の硝子細工の店でピアスを買ってあげた。全然高いものじゃないのに、嬉しそうにその場で着けて、ずっと触ってる姿を見るとこっちも笑顔になってしまう。 ゆらゆら、緑と白の硝子が耳元で揺れる。 「可愛いね」 と、俺も時々モナちゃんの髪を耳にかけたりして、揺らす。たぶん、今日のこの旅行中、息するより自然に『可愛い』って言ってしまってる気がする。 すごい年下なこともあるけど、横にいるとちっちゃいし、ずっと笑ってるし、とにかくただただ可愛い。何しても可愛い。
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