vol.3

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何で、今は何もしない(つまり、夜にしよう)って言ってしまったんだろうなと思い始めた頃、生理的な事情で少し距離を取った。 もういっか。とも思ったけど、今してしまうとモナちゃんは食事どころじゃなくなったら可哀そうだし、温泉だってゆっくり浸かって……そう思うと、ちょっと前の俺の『今は何もしない』というのは賢明な判断だ。 「夕食が豪華だから、腹減らさなきゃね。散歩でも行こう」 「あ、はい」 窓際に行って、外の景色を確認する。 「寒いけど、気持ち良さそうだよ」 「そうですね、海辺が気持ち良さそ……」 目が合うと、キスをしてしまう。我慢して、我慢して、少しばかり手が勝手に胸のラインをなぞってしまったのは許して。最後にチュッと小さなキスをして 「行こっか」 と、離れた。モナちゃんは真っ赤。 「うん、行こ」 そう言うと、俺の腕に自分の腕を絡めた。……敬語じゃないの、可愛い。腕に、柔らかいものが当たってる。 後で。後でちゃんと触ろう。揉もう。も、揉もうって変な日本語だな。揉もう、揉もう、合ってるのか? 「伸之さん? 鍵、私閉めよっか?」 「あ、大丈夫。ごめん」 冷たい潮風が、俺の頭を冷やしてくれますように。海辺を手を繋いで散歩する。腕の柔らかい感触は名残惜しかったけど、これはこれで幸せだ。
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