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──……
「伸くん、伸くん、聞いて! 仕事がね、新しいスタッフが増えてね、土日の休みが増えそう!」
「ふうん、そっか」
聞いてたから、知ってる。ちょっと意地悪したくなっただけ。だって、可愛いから。
「嬉しくないの?」
「うーん」
しゅんとしてしまって、意地悪は早々に終了。
「芳川から聞いてた。嬉しいに決まってる」
パッと表情が変わる。何度かキスすると、慣れた感じで組み敷いた。
「髪が、伸びたね。特に前髪。短かったのに」
キスの合間にそう言う。
「うん、伸ばしてるの」
「へえ、何で?」
本当は、わかってるけど、そう聞く。
「ちょっとでも、大人っぽく見えるように」
と、くりんと上目遣いで恥ずかしそうに言う。
「へえ、何で?」
「だって、」
「うん?」
「伸くんに、似合うように……って、わかってるくせに」
どん、と胸を押される。
「うん」
そう、わかってる。言わせたかっただけ。そして、言ってくれて満足した。キスを深めると、すぐに力が抜けていく。
緩く開いてくる唇と身体に、慣れたなあって思う。すぐに荒くなる呼吸と我慢出来ずに漏れる声に、もう痛くはないらしい。
「やる気満々だね」
こんな風にからかっても、
「伸くんだって」
と、言い返されるだけだ。可愛いなあ、今日も。
『ナシ』とか言っておきながら、俺の方がどっぷりハマってる自覚はある。ひょっとしたら、庇護欲というより、振り回されたい願望かもしれない。
「伸くん、ダメだよぅ、休まないで」
「……はい」
と、思う今日この頃。
────end
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