vol.3

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──…… 「伸くん、伸くん、聞いて! 仕事がね、新しいスタッフが増えてね、土日の休みが増えそう!」 「ふうん、そっか」 聞いてたから、知ってる。ちょっと意地悪したくなっただけ。だって、可愛いから。 「嬉しくないの?」 「うーん」 しゅんとしてしまって、意地悪は早々に終了。 「芳川から聞いてた。嬉しいに決まってる」 パッと表情が変わる。何度かキスすると、慣れた感じで組み敷いた。 「髪が、伸びたね。特に前髪。短かったのに」 キスの合間にそう言う。 「うん、伸ばしてるの」 「へえ、何で?」 本当は、わかってるけど、そう聞く。 「ちょっとでも、大人っぽく見えるように」 と、くりんと上目遣いで恥ずかしそうに言う。 「へえ、何で?」 「だって、」 「うん?」 「伸くんに、似合うように……って、わかってるくせに」 どん、と胸を押される。 「うん」 そう、わかってる。言わせたかっただけ。そして、言ってくれて満足した。キスを深めると、すぐに力が抜けていく。 緩く開いてくる唇と身体に、慣れたなあって思う。すぐに荒くなる呼吸と我慢出来ずに漏れる声に、もう痛くはないらしい。 「やる気満々だね」 こんな風にからかっても、 「伸くんだって」 と、言い返されるだけだ。可愛いなあ、今日も。 『ナシ』とか言っておきながら、俺の方がどっぷりハマってる自覚はある。ひょっとしたら、庇護欲というより、振り回されたい願望かもしれない。 「伸くん、ダメだよぅ、休まないで」 「……はい」 と、思う今日この頃。 ────end
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