vol.4

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 人懐っこい笑顔に私も笑顔になった。人懐っこいのだ、あのは。裕くんの無邪気さはカラリとしている。でもなあ、義仁は全然、カラリとしていない。腹の中が見えないのだ。 話しかけ方も話す内容も大したことないのに、どうも裏があるような、いけすかない感じがするのだ。義仁に対してそう思っているのは、どうやら私だけのようだった。 大友家がここに来たのは小学校の頃だ。子育て世代が住む新しい家が次々に建って、子どもたちみんな幼なじみだった。そんな中、外国からやってきたという大友兄弟は羨望と好奇な目で見られていた。 出来上がったコミュニティに入るには勇気がいる。でも裕くんも義仁もすんなりと入って来た。入ったら、あっという間に中心にいるのだから、さすがと言うか、なんと言うか。 そんな中心にいたにも関わらず、義仁はそれに満足もしていなかったのだろう。何の迷いもなく高校生になると、また海外へと行った。 ずっと日本にいたとしても、しばらく会っていない友人に会うと声をかけるのを躊躇したりするものだ。もしかして、自分のことを覚えてないかもしれない。そう思って、目があっても相手の出方を伺ったりするものだ。 恐らく、そんなことは考えたこともないのだろう。あの兄弟は。自分のことを忘れる人なんて、いるわけないと。疑ったこともないのだろう。そして、その通りなのだから別にいいと思う。思うんだけど……。
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