vol.4

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自分たちだって睨んだし、自分たちだって無視したのに、私は目が合えば微笑んで、声を掛けなきゃならないのだろうか。 そうしたとしても何か言われるに決まっていた。とにかく、私は良いのは外見だけで性格は悪いということにしたいのだろう。綺麗なことを鼻にかけてるという、何かと理不尽なことを言われた。 そんな中、幼なじみというのはありがたい存在だった。見た目だけで寄ってくる人も悪口言う人もいないのだから。親密ではないにしろ、おそらく一生の付き合いになると思う。親を通して、繋がっていて情報は入ってくる。そんな存在だった。 義仁もそのうちの一人だ。ただ、義仁は一番最初に地元を離れたから、一番疎遠になるはずだった。 私はこの大友義仁がどうも苦手だった。幼なじみの和田真知子には三つ下に妹がいて、私は真知子ともその妹の朋子ちゃんとも仲よくしていた。その朋子ちゃんが、義仁の弟、裕くんと仲良しなのだ。 和田家の母親と大友家の母親同士が親友で、大友家が日本に帰る時、義仁の母親が真知子の母親を頼ってここに居住を構えたらしい。 だから、真知子を通じて義仁の情報はいつも入ってくるのだ。 「法子、そろそろ義仁帰ってくるみたいだけど、いつ空いてる?」 当たり前みたいにこう聞かれることにも、もういいかと思った。 「私、予定合えばでいいよ。義仁って、そんなに仲良くないし」 真知子はそれに意外そうな顔をした。私がこんなこと言うなんて思ってもみなかったのだろう。
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