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「そう? 仲いいと思ってた。いつも話してるし」
「あの人は誰とでも話すでしょ」
「そりゃそうだけど……でも」
「真知子、実は私さぁ、義仁って苦手」
真知子はポカーンとした顔で私を見上げた。それはそうだと思う。もう何年の付き合いだって思うし、今さらだし、何よりあの義仁を苦手などと言う人間がいることが信じられないのだと思う。
「え、何で?」
「……何で?」
「そりゃあ、理由があるでしょ?」
理由なんてなかった。ただ、何となく気に入らなかった。後から来てごく自然に輪の中心にいるとことか?当たり前みたいに自分が帰国時にはみんなが集まってくれると思ってるとか、あの外見もスペックも、全部当然のように思ってそうというか、鼻にかけて……
「いや、あんまり仲良くないってだけ」
私は慌ててそう言った。
そうだ。あんまり仲良くない。それなのに鼻にかけてる、だなんて。自分が長く言われ続けていたことを他人に思うなんて。
「じゃあ、仲良くなったら? 義仁も喜ぶよ」
「……うーん。でもやっぱり予定が合えばでいいよ」
「わかった」
真知子はそれ以上は言わなかった。義仁って、どんな性格だろうか。そんな決めつけなしに思いだそうとしても思い出せなかった。何それ、バカじゃないの、私。
みんなに対しても、昔からの付き合いだからって自分からは何もしなかったな。関係を継続しようとする努力もしてなかった。少なくとも、義仁はそれをしていた。
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