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──社会人生活にも慣れた頃だった。私は相変わらず地元にいたし、幼なじみの集まりは、以前よりずっと緩いものになっていたが、なくなることはなかった。
大友家もここからなくならなかったし、裕くんは帰国して叔父の仁さんの仕事を手伝うと聞いた。恐らく、裕くんはこれからずっと日本にいるのだろう。
義仁は戻らないのかな。そう思う自分にハッとした。戻ったとしても、地元にはいないだろう。ただ、日本にいるってだけで。
──年末。
地元に帰るから会おうと真知子から連絡があった。恋人の尚信も一緒だと言った。私は少し前まで恋人がいたが、今はいなかった。親に紹介するような恋人はいたことがなかったから、真知子と尚信が羨ましくもあった。変わらない二人を見ると安心した。
そしてそれを二人になら素直に
「羨ましい」
と、言える関係になっていた。
真知子と尚信は二人顔を見合せると不思議そうな顔を同時に私に向けた。
「法子だって、恋人がいるでしょ?」
「少し前に別れたのよ。私が理解してもらう努力を怠ったの。またやっちゃった」
「法子……」
「いいの。終わったことだし」
「法子見てると、美人も大変なんだとしみじみ思うわ」
「もう、美人だなんて。美人なのかな?」
「美人でしょ、そりゃ。あんたが美人じゃなけりゃ、誰が美人なのよ」
真知子が言って、尚信が笑った。
「ふふ、ありがとう」
二人からの言葉なら素直に受け取れるのに。例えば外見を褒められたら、外見を褒めてくれただけって思える。だけど、親しくない人から美人だって言われても“性格は悪いけど”って言われた気になるのだ。中身を貶したんじゃない。外見を褒めてくれた。それをどうも捻れて受け取ってしまうのだ。
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