vol.4

12/37

1118人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
「お正月だもんね。いつまでいるのかな? 私、今年の休みちょっと短くて、会えるかな」 「や、違うって。ずっとこっちにいるかもって。まだ決定じゃないけど、そろそろ落ち着きたいって言ってた。やっぱ日本かなぁって」 そっか。疎遠になると思ってたけど、そこまで疎遠にならないのか。 「まあ、日本も広いもんね。朋子ちゃんは帰って来てこないの?」 「うん。彼氏もあっちだしね」 「彼氏、九州の人なんだ?」 「ちがーう、こっちの子で高校から付き合って一緒に九州に行ったの。あ、これは秘密ね」 「……え、そうなんだ。朋子ちゃんはてっきり裕くんと付き合うのかと思ってた」 「ねえ、私も」 「……俺も」 「お正月の初詣は毎年一緒に行ってるのよ、朋子と裕くん」 「「……」」 「そっか。男女って難しいね」 「そうだね」 「あ、私が裕くん狙っちゃおうかな。三つ下くらい、全然……」 真知子と尚信の顔が酷くひきつったので、私は慌てて否定した。 「冗談よ、冗談だってば!」 「法子、裕くんのこと格好いいって言ってたし」と、真知子が告げ口する。 「え、マジ!?」 「格好いいでしょ!? 裕くんは格好いいじゃない。別に、合ってるじゃない!」 「……まあ、合ってるけど、リアルな存在なだけに、疑ったわ。法子もそんな俗っぽいこと言うのは意外だった」 尚信が目を細めて、私は焦って言い訳を続けたのだった。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1118人が本棚に入れています
本棚に追加