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大晦日、家の固定電話が鳴った。電話を受けた母親の声が弾んでる。不思議に思うと、電話の主は義仁だった。
『法子、今から出てこれる? 初詣に行こう』
「今から?」
『そ、今日はずっと電車動いてるんだろ?』
「ああ、二年参りね。わかった、行く。準備するからちょっと待ってね」
『じゃあ、15分後に法子の家の前で待ってる』
母親にもそう伝えると、上機嫌だった。良い年の娘が家にいるより、例え幼なじみだとしても、男子と出掛けた方が健全だと思ってるに違いなかった。
他に誰か来るのかな。寒くないように厚着をして外に出るとそこには既に義仁がいて、一人だけだった。義仁の背後へと視線をずらしたが、
「俺だけ」と苦笑いされてしまった。
「寒いね。裕くんは朋子ちゃんと毎年初詣行ってるんだってね」
「そう。大友家と和田家全員で毎年行ってたのを律儀に守ってる二人。と見せかけて……会いたいんだろな、あの二人も」
「朋子ちゃん彼氏いるんでしょ?」
「うん。裕もいんじゃねえ? 真知子なんて彼氏出来てから絶対来ないしな。俺も邪魔する気はないし。要は行く気があるかないかだよな」
「そっかあ」
としか言えなかった。
「俺は法子と行けばいいしね」
義仁がにっこりと笑う。
「毎年? 」
「そう」
「やだよ。私も一抜けしたい」
「だから、二人で抜けるのはどう?」
私は足を止めて義仁を見つめた。義仁はただ、にっこり笑っているだけだった。
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