vol.4

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「それは、どういう意味?」 ちゃんと聞こうと思う。義仁の表情から読み取れるものはない。 「だから、法子が恋人募集中なら俺のことを考えてくれないかなって思ったんだけど。どう?」 私は義仁の言葉を聞いてからまじまじと義仁の顔を見つめた。夜だけど街灯や家の外灯で表情が読めないほどじゃない。これは好意を持たれていて口説かれているということなのだろうか。 義仁は私が至近距離でじっと見つめてもたじろぐこともなく、にっこり笑う。昔からの付き合いであるとはいえ、二人で会うのは初めてで、そんなに話したこともない私に好意を持つ? 持ったとしても、こんなに動揺することなく口説けるものなのだろうか。 義仁からは緊張する様子や、はにかんだ様子すら見られなかった。 「無理よ」 私がそう言っても義仁の表情は変わらなかった。にっこり笑ったまま言うのだ。 「どうして?」 「私はあなたに良い印象を持ってない。これだって、一応、告白でしょう? でも全然振られると思ってないんだもの。義仁、あなた振られたことないでしょ? 」 義仁の中に“振られる”というビジョンはなかった。私が頷くと確信してるようだった。 「一応かあ、酷いな。ちゃんと告白だよ。俺、法子のことが好きなんだ。法子はどう? 全然ダメ? 」 は、と短い息を吐くことが出来ただけだった。自信に満ち溢れた表情なのは変わらない。だけど、『好き』と言ったのは本当だと信じられる気持ちがちゃんと乗った言葉だった。 ほんの少し前まで、平気で顔を見ていられたのに、それが出来なくて私は向き合うのを止めて歩き出す。義仁が私にすぐ追い付くと 「少し、時間をくれない?」 俯く私の顔を下から覗きこみ、そう下手(したて)に出る。
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