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「さっきの、答えてないじゃない。振られたことないんでしょ」
気まずさからそう言うと、義仁はふっと笑った。私は自分の顔が熱くなるのを感じた。どうして私の方が動揺しなきゃならないの。だから、嫌なのよ。
「ないよ。法子次第だけどね」
「へえ、じゃあ、初めて振られるのね」
「ふふ、はは。そうだな」
義仁は可笑しそうに笑う。それきりこの話は終わってしまった。あれ、私はこれで義仁を振ったことになったのかな?それなら今からの参拝は気まずいことになるんじゃ……。
「俺は法子に俺を紹介しようと思ってたんだけど、タイプじゃなかった?」
「あなたねぇ! 自分のことをタイプじゃない女なんていないと思ってるんでしょう?」
「さぁ、法子くらいなのかなあ」
「……」
絶句。腹が立ってきて、睨みつけたけど、笑顔で返されてしまった。
「法子は、もっと前に誰かに『義仁はどう?』って聞かれたとしても『遠くに住んでるしいいや』って言うと思ったんだ。単純に遠くに住んでる男は対象外。だろ?」
「多分、そう言ったと思う」
「だから、こっちに帰ってこようかと思って。法子の近くにいないと視界に入れて貰えないって嫌というほど感じた」
確かに、敢えていつ戻ってくるか、戻らない人を選ぶ必要はないと思う。けど、それってどういうことだろう……。私がいるからこっちに帰ってくるということ?
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