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「それって私の責任重大じゃない? 私がいるから帰ってくるの?」
「そうだよ。でもどのみちもう結婚して子供育てるならこっちでって決めてたし。生きやすいな、こっちの方が」
「それは、私が義仁を振っても、誰かとこっちで家族を築くってことね?」
「うーん、考えたことないな。法子以外とは」
「ちょっと、それすごい怖い! 何よその自信……」
「あ、確かに、怖いな。ごめん。そうじゃなくて、俺は法子を好きなわけだろ? それなのに他の女の人との未来を想像したりはしないってこと。振られて立ち直って、また誰かを好きになったら誰かとの未来を考えるかもしれない。今は無理だけど。恋ってそうじゃないの?」
「そうね」
「うん。けど、片思いでそれを相手に伝えたら確かに怖いな。あはは」
義仁は所々風変わりなところがある。あと、やっぱり、調子に乗ってると思う。だって、私は一応振ったというのに、何事もなかったかのように微笑みかけるのだから。
そして、それに呆れて私も笑顔を返すと躊躇いなく私の手を取って「寒いな」なんていいながら自分の手を私の手ごとポケットに入れてしまったのだ。
これはどういうことなのだろう。振ったのだから、振られたと思ってくれていないとおかしいのに。
「ちょっと、考えてみてよ」
義仁が道すがらそう言って、私は
「そうね」
と、義仁の方も向くことも出来ずにそう言った。
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