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「ねえ、そこの神社じゃなくて?」
「うん。少し離れたとこ。でないと、直ぐに帰ってくることになるだろ。来年はそこの神社に行こう」
当たり前みたいに来年の話をされてしまった。
「お蕎麦はどこで食べるの?」
「ぶっ」
「え、食べないの?」
「いや、どこかで店に入ろうか。混んでるかな。いいか、時間はあるし。カウトダウンまでには食べよう。きっと今夜は蕎麦屋も遅くまで開いてるだろう」
「そうね、お腹すいちゃった」
義仁といるのは意外に嫌じゃなかった。話しやすいし、何より電話がかかってきて15分後に待ち合わせ出来てしまうほど、私も気取らなくていいのだ。どうせ小学生の頃から知っているのだから。
知ってるけど、知らないことの方が多い。だから私は知ってみようと思う。義仁が本当に嫌なやつか。それと、自分が格好いいことを鼻にかけてるか。そう思うとバカバカしくて、楽しくなってきてしまった。
義仁も特に格好つけて張り切ったりもしなかった。
特に準備もしないで、今日私を誘ったのだとわかった。だから、私も特に気負わないで過ごせた。期待しない分、行き当たりばったりで少し足止めされたりもしたが、お蕎麦は美味しかったし、何もしてなくても楽しかった。
意外だった。それが良い方向へ感情が振れた。義仁はこういうデートでは完璧にエスコートするのかと思ってた。
「あ、ヤバい。予想外の人出」
とか、言って笑ってる。
「そんなの、予想外じゃないでしょ」
「んー、こりゃあ来年は絶対地元の神社な。二人っきりとか夢のまた夢だな。残念」
「ばか」
「混んでるけど、誰も見てないもんな」
と、意味深に笑う。
「ばっ、そんな神前で何をするつもりなの?」
「何もしないって。あはは」
人混みも待ち時間も穏やかに待つし、どんな人にも丁寧に対応してる。人懐こいのはずっと変わらない。
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