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カウトダウンが終わると、あちこちで新年の挨拶が交わされ、次第に雑踏に消えて行った。
「今年もよろしく」
義仁は私の耳元でそう言うと、背中にまわした手を緩めた。
私は私の行動に驚いていた。いや、義仁の行動にも驚く。この繋いでる手だってそう。どういうつもりなのかな……って。
普通は、義仁が私に『どういうつもりだ』って思うんじゃないかな?振った方の私が翻弄されて、気持ちが昂ってしまった。何をしているんだろう。
「そう言えば、義仁って私に恋人がいるかどうか他の人に聞いてたよね。聞こえてたよ。私に直接聞いてきたのは今回が初めてだね」
義仁は少しばつが悪そうな顔をした。ただの会話の糸口だと思っていた私は意外に思った。あれ、どうしたんだろう。
「物事にはタイミングというものがある」
「……うん?」
すごい難しい顔で言うから首を傾げた。
「俺は、このタイミングだけは絶対に逃したらダメだと思っていて、今回は完璧だったと自負している」
「……どの?」
義仁は、はぁとため息を吐いて片手で顔を覆った。
「確かに、俺は帰る度に誰かに『法子に恋人はいるのか』って聞いてたけど、それは……」
「帰る度に確認してたの? 誰かに? どうして?」
義仁の目が見開かれて、少し揺れた。私はまたこんな時でさえ義仁の綺麗な瞳に見とれていた。
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