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何だか、尚信と真知子が同情した顔をしているのが浮かんだ。やっと、腑に落ちた。そんな私に義仁は追い討ちをかけた。
「俺の初恋は法子だよ」
「ええ、きもっ。……十歳じゃない。もう二十年近く経つわよ、義仁」
私は指折り数えた指が全然足りなくて、早々に諦めて義仁を見上げた。
「うん。あの頃は幼い恋心だったけど、気持ちが安定しても好きなんだから、俺は法子に振られたらどうしていいかわかんないな。つか、酷いな?」
「ずっと一途に思い続けてくれたわけじゃないんでしょうけど、いつかはって想ってくれてたの?」
「そう。そのいつかがやっと来たってわけ。いいタイミングだろ? つか、酷いな?」
ほんと、いいタイミングだ。私が幼なじみにまで視野を広げようとしたタイミングで目の前に来たのだから。だけどそれもきっと、義仁が見計らったからなのでしょうね。
「私は今から義仁のことを知る努力をする」
「酷いな? ってのはスルーだな、法子。うん。一年後くらいにはこっちに帰ってくるから。俺がイギリスにいる間に法子も遊びにおいで。案内する」
イギリス……。行きたいけれど、付き合ってない相手に会いにそんなところまで行っていいのだろうか。義仁は私がそう考えてしまったのを察したらしい。
「真知子は来たことあるぞ?」
「そ、それは和田家全員で行っただけでしょうが!」
「うん。尚信と来たこともあるぞ?」
「それは……二人のデートでしょうが」
「うん。だから、俺たちもどう?」
どう……と、言われても。
「行く」
「うん。待ってるな」
ようやく私たちの参拝の順番がまわってきたようだった。
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