vol.4

25/37
前へ
/192ページ
次へ
それから直ぐに、尚信と真知子が結婚した。子供が出来たのだ。すごくバタバタして大変だったと親経由で聞いた。 どのみち二人が結婚することは疑いようがなかったし、両家とも仲がいいので普通の夫婦みたいに挨拶やら何やらが簡易化され、何より孫が誕生することに浮き足立っていた。 そりゃあ、そうか。私たちはもう三十路なのだから。 真知子と尚信を誘ってイギリスに行こうかと思っていた私は一人で行くしかないようだ。私は相変わらず、義仁のことを良く知る努力を継続中だった。 真知子と尚信の赤ちゃんは夏には生まれてくる。ずっと昔のままではいられなくて、時は流れる。不思議と不安は感じなかった。特に頻繁に連絡をくれるわけでもないのがまた義仁らしい。 それでも義仁は帰ってくるし、あの鼻にかけたイケメンぶりも今は頼もしく思う。 数ヶ月後、私は休みを取って義仁に会いに行った。すごく変な感じだ。義仁は友人を紹介してくれたし、私のことも友人だと紹介した。と、思う。girlfriendだけしか聞き取れなかった。 会いに来たのは私だし、私たちの関係を考えてみると保留したのも私だ。でも何か気分がすっきりしない。私は、義仁が私の事を指す『友達』という言葉が気に入らないのだ。 じゃあ、何て言って欲しかったんだろう。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1118人が本棚に入れています
本棚に追加